2006年04月02日
能面を打つ-映画『面打』
*ネタで映画を見ないのが感激コンサル流。ネタバレが嫌なら読まないでねv
久しぶりに会う、かわいい靴職人の卵の友達と待ち合わせて、アップリンク・ファクトリーへ向かう。
人混みも減る渋谷奥のこの映画館は、常に、気の利いた感激コンサルタント心をくすぐるイベントをやっていて、私の大好きな場所。
もしも家から歩いていける範囲にこのビルがあったら、おそらく毎日のように出没しているだろう。
惜しむらくは、イベントが盛り沢山過ぎて、スケジュールが組みにくいこと!(^^;)
毎日のように上映作品もイベントも入れ替わるので、ぼんやりしていると出会いを逃がす。
今日見る映画は、『面打』というドキュメンタリー。
アップリンクから届いたお知らせメールをちらっと読んだ私は、絶対にこれは面白い!!と根拠なく確信(^^)
以下案内文を抜粋。
+++++++++++++++++++++++++++++++
ドキュメンタリー映画『面打/men-uchi』は22歳の若手面打、新井達矢が一つの能面を製作し、
能楽公演に使用されるまでをとらえた映画である。ナレーションやインタビュー等、言葉による説明を一切排し、ひとつの四角い木の塊が削られ、剥がされ、次第に表情を帯びていく様をひたすら見つめ続ける。沈黙の作業空間に、ただ鋭利な刃物が木を刻んでいく音だけが静かに響きわたる。
+++++++++++++++++++++++++++++++
「ナレーションやインタビュー等、言葉による説明を一切排し」「ただ鋭利な刃物が木を刻んでいく音だけ」ってのがたまらなく良い(^^) ドキュメンタリー好きにはぐっと来るものがある(^^)
そして。.......面白かったよぉぉぉぉぉぉ〜
良く読むと、メールにはちゃんと「22歳の若手面打、新井達矢が」って書いてあるんだけど、私はすっかり見逃していて、新井君が出て来た冒頭からのけぞった。わっか〜〜〜〜〜〜い!!!
能面を作る人なんて、着物を着たおじいちゃんに違いないって感じ、しない???
それもどっか、栃木かなんかの山奥に暮らしていて、周辺は竹林、犬と猫を飼っていて、家の中にはもちろんいろり。みたいな。
しかし新井君は普通の男の子に見えた。いや、中学生だと言われても信じたね、私は.....
その彼が、普通の男の子の格好(トレーナーにジーパン)をして、自分の机(普通の学習机)に向かい、ライトをつけて、白い紙に鉛筆で作製する能面をデッサンするところから映画は始まる。
机の脇にはラジカセ!招き猫の貯金箱も置いてあった。
ところが、その鉛筆書きの絵からして、なんだかあっという間にすごいものが描かれていくんだね。鉛筆も定規も紙も、私たちが持っているのと少しも変わらない道具なのに。
驚く間もなくシーンは変わり(おそらく日付も変わり)、外で木の固まりをざっくり四角い『家庭の医学』を分厚くしたくらいの大きさに割る。
今度は家の中に入ってそれをどんどん削って行く。
ノミもかんなも、技術家庭の授業で使うような、普通のものだ(いや、違うのかも知れないが、なにか特殊な道具ではなかった)。それが、ぴかぴかに磨かれて、音を立てながら木を削っていく。ジーンズの上に布を広げた、新井君の膝の上で。
.......それがねぇ〜もうものすごい確実なんだよ。迷いがない。どんどんどんどん削って行く。危うさがない。
ほら、普通、「ここ、こうかな〜?」「もうちょい削る?」「あ、しまった?」とか、なんかあるじゃない???
そーゆーのが全くない。いや、そーゆーシーンは削ったのかも知れないけど、それにしてもその手の動きに迷いは一切感じられない。
ざっと鉛筆で中心線を描いたりはしてるんだけど、そんなものじゃなく、まるで「完成形」がすっかり見えているかのように、どんどんどんどん木は削られていき、少しずつ、額が生まれ、鼻が生まれ、ぎゅっと結んだ唇が生まれ、大きく盛り上がった眉間が生まれ、耳が生まれ.......「顔」になっていく。
それでも新井君は手を止めることなく、どんどんどんどん削って行く。
固まりだった木は、どんどん薄くなって、「お面」になっていく。
最初粗かったその削り跡も、今じゃもうつるつるの肌だ。目。目の穴をあける。
やがて.....削り終わる。(その状態でもおおっと思うほど美しいが、それで終わりじゃない。)
薬剤につけて、お湯で流し、乾かして、今度は色を塗る。
私、初めて知ったんだけど、能面って全部一人で作るのね!最初から最後まで。削ったらハイ終わり!塗る人頼むよ、じゃないんだね。
その色も、いきなり面の色を塗るんじゃなくって、地の色を幾重にも塗り重ねる。
それからひげをつける。目の白目に貼る真鍮(??違う??マテリアルには詳しくないので間違ってたらごめんよ)を叩いてカーブを作り、その上に金箔をのせてはめ込む。
なんでもできちゃうんだね!ってゆーか、なんでもできないと面打(能面を作る人のことを「めんうち」と言うらしい)にはなれないんだね。
やがて完成。能面は演者の元に届けられ、上演を迎える。装束をまとった最後に、新井君の作った面がつけられる。そして舞台。
演目は『鞍馬天狗』。まるで......まるで生きているかのように表情が変わる。作って置いてあったときも美しかったけれど、そうじゃない。舞台の上で演者の「顔」となってこそ、そこには命が宿る.......。
それが能面の役割だなんてことは知っていた。知っていたけど、う〜ん、一つの芸術、一つの舞台が生まれるためには、何人もの匠が、いくつも命を吹き込んで、それが初めて舞台で立ち上がってくる。
出来上がったものだけ見るのはとてもとても気軽で簡単なことだけど、そこで見ているものの価値の、この深さと重み。
花屋で花を買って来ることは簡単だけど、種を蒔き、水をやり、虫を捕り、日にあてて育てるのは大変だ。月日も手間も、そんな簡単なことじゃない。
だけど花を買うとき、私たちはその花の生まれ育った過程のことなんか忘れてる。ただ、花の美しさだけを愛でる。
もしも、種と花と、その過程の価値を知っていたら、マンションの屋上から人を投げ飛ばしたりできないと思うんだけど。
花だけ買う私たちが、種と花のその過程をつなぐには、想像力が必要。
その想像力さえあれば、今目にしているものの誕生と成長がかけがえのないものに見えるはず。
芸術って、その存在自体が、生命と誕生、成長(そして恐らくは老いと死)を、礼賛しているものなのかも知れない。
私たちの足りない想像力を補って刺激し、芸術や生命についてまで考えさせてしまうのは、この映画がシンプルにアートの誕生を扱っているためだと思う。
言葉を廃し、フィクションを廃したその姿勢は正解!とっても面白い良い映画だった。
上映の後、(これも私はちゃんと読んでいなかったのだが(^^;)、)能舞の上演があり、これがまたびっくりした。
お能を見たことは何度かあったが、こんなに近くで見るのは初めて。しかも能楽堂という空間ではなく、それ用になにかしつらえのある空間でもないこの狭い上映会場で(^^;)
観世流能楽師の中所宜夫さんがつけた面がまた絶世の美女で、息を飲むほど美しい。一体なんて顔!?しかも顔だけじゃなくて、表情が変わるようにしか見えず、見入ってしまう。
このお面も、新井君の作製だそうで......22歳でこんなお面を作るのかぁ......末恐ろしや(^^;)
最後に舞台挨拶で、ご本人新井達也君が登場。舞台にあがらずもじもじしている居心地の悪そうな様子に、いかにも!な気がしておかしい(^^)。能面同様、濁りのないひとなのだろうと思った。
もしかしたら。
若さ故にこんな完璧な(と私には見える)能面が作れるのかしら??
もしも年を取ったら、悩みや迷いを抱えた、もっと渋い味わいのある人間臭い面が生まれて来るのかしら??
それはそれで楽しみ!
今度能を見るときは、大分見方が変わりそうな予感がします(^^)
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■ハシモトの好きな映画がてんこ盛りアップリンク・ファクトリー
■映画の説明ページはこちら『面打』
■能についてもっと知りたい!方はこのページがお役立ち!
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もしも家から歩いていける範囲にこのビルがあったら、おそらく毎日のように出没しているだろう。
惜しむらくは、イベントが盛り沢山過ぎて、スケジュールが組みにくいこと!(^^;)
毎日のように上映作品もイベントも入れ替わるので、ぼんやりしていると出会いを逃がす。
今日見る映画は、『面打』というドキュメンタリー。
アップリンクから届いたお知らせメールをちらっと読んだ私は、絶対にこれは面白い!!と根拠なく確信(^^)
以下案内文を抜粋。
+++++++++++++++++++++++++++++++
ドキュメンタリー映画『面打/men-uchi』は22歳の若手面打、新井達矢が一つの能面を製作し、
能楽公演に使用されるまでをとらえた映画である。ナレーションやインタビュー等、言葉による説明を一切排し、ひとつの四角い木の塊が削られ、剥がされ、次第に表情を帯びていく様をひたすら見つめ続ける。沈黙の作業空間に、ただ鋭利な刃物が木を刻んでいく音だけが静かに響きわたる。
+++++++++++++++++++++++++++++++
「ナレーションやインタビュー等、言葉による説明を一切排し」「ただ鋭利な刃物が木を刻んでいく音だけ」ってのがたまらなく良い(^^) ドキュメンタリー好きにはぐっと来るものがある(^^)
そして。.......面白かったよぉぉぉぉぉぉ〜
良く読むと、メールにはちゃんと「22歳の若手面打、新井達矢が」って書いてあるんだけど、私はすっかり見逃していて、新井君が出て来た冒頭からのけぞった。わっか〜〜〜〜〜〜い!!!
能面を作る人なんて、着物を着たおじいちゃんに違いないって感じ、しない???
それもどっか、栃木かなんかの山奥に暮らしていて、周辺は竹林、犬と猫を飼っていて、家の中にはもちろんいろり。みたいな。
しかし新井君は普通の男の子に見えた。いや、中学生だと言われても信じたね、私は.....
その彼が、普通の男の子の格好(トレーナーにジーパン)をして、自分の机(普通の学習机)に向かい、ライトをつけて、白い紙に鉛筆で作製する能面をデッサンするところから映画は始まる。
机の脇にはラジカセ!招き猫の貯金箱も置いてあった。
ところが、その鉛筆書きの絵からして、なんだかあっという間にすごいものが描かれていくんだね。鉛筆も定規も紙も、私たちが持っているのと少しも変わらない道具なのに。
驚く間もなくシーンは変わり(おそらく日付も変わり)、外で木の固まりをざっくり四角い『家庭の医学』を分厚くしたくらいの大きさに割る。
今度は家の中に入ってそれをどんどん削って行く。
ノミもかんなも、技術家庭の授業で使うような、普通のものだ(いや、違うのかも知れないが、なにか特殊な道具ではなかった)。それが、ぴかぴかに磨かれて、音を立てながら木を削っていく。ジーンズの上に布を広げた、新井君の膝の上で。
.......それがねぇ〜もうものすごい確実なんだよ。迷いがない。どんどんどんどん削って行く。危うさがない。
ほら、普通、「ここ、こうかな〜?」「もうちょい削る?」「あ、しまった?」とか、なんかあるじゃない???
そーゆーのが全くない。いや、そーゆーシーンは削ったのかも知れないけど、それにしてもその手の動きに迷いは一切感じられない。
ざっと鉛筆で中心線を描いたりはしてるんだけど、そんなものじゃなく、まるで「完成形」がすっかり見えているかのように、どんどんどんどん木は削られていき、少しずつ、額が生まれ、鼻が生まれ、ぎゅっと結んだ唇が生まれ、大きく盛り上がった眉間が生まれ、耳が生まれ.......「顔」になっていく。
それでも新井君は手を止めることなく、どんどんどんどん削って行く。
固まりだった木は、どんどん薄くなって、「お面」になっていく。
最初粗かったその削り跡も、今じゃもうつるつるの肌だ。目。目の穴をあける。
やがて.....削り終わる。(その状態でもおおっと思うほど美しいが、それで終わりじゃない。)
薬剤につけて、お湯で流し、乾かして、今度は色を塗る。
私、初めて知ったんだけど、能面って全部一人で作るのね!最初から最後まで。削ったらハイ終わり!塗る人頼むよ、じゃないんだね。
その色も、いきなり面の色を塗るんじゃなくって、地の色を幾重にも塗り重ねる。
それからひげをつける。目の白目に貼る真鍮(??違う??マテリアルには詳しくないので間違ってたらごめんよ)を叩いてカーブを作り、その上に金箔をのせてはめ込む。
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やがて完成。能面は演者の元に届けられ、上演を迎える。装束をまとった最後に、新井君の作った面がつけられる。そして舞台。
演目は『鞍馬天狗』。まるで......まるで生きているかのように表情が変わる。作って置いてあったときも美しかったけれど、そうじゃない。舞台の上で演者の「顔」となってこそ、そこには命が宿る.......。
それが能面の役割だなんてことは知っていた。知っていたけど、う〜ん、一つの芸術、一つの舞台が生まれるためには、何人もの匠が、いくつも命を吹き込んで、それが初めて舞台で立ち上がってくる。
出来上がったものだけ見るのはとてもとても気軽で簡単なことだけど、そこで見ているものの価値の、この深さと重み。
花屋で花を買って来ることは簡単だけど、種を蒔き、水をやり、虫を捕り、日にあてて育てるのは大変だ。月日も手間も、そんな簡単なことじゃない。
だけど花を買うとき、私たちはその花の生まれ育った過程のことなんか忘れてる。ただ、花の美しさだけを愛でる。
もしも、種と花と、その過程の価値を知っていたら、マンションの屋上から人を投げ飛ばしたりできないと思うんだけど。
花だけ買う私たちが、種と花のその過程をつなぐには、想像力が必要。
その想像力さえあれば、今目にしているものの誕生と成長がかけがえのないものに見えるはず。
芸術って、その存在自体が、生命と誕生、成長(そして恐らくは老いと死)を、礼賛しているものなのかも知れない。
私たちの足りない想像力を補って刺激し、芸術や生命についてまで考えさせてしまうのは、この映画がシンプルにアートの誕生を扱っているためだと思う。
言葉を廃し、フィクションを廃したその姿勢は正解!とっても面白い良い映画だった。
上映の後、(これも私はちゃんと読んでいなかったのだが(^^;)、)能舞の上演があり、これがまたびっくりした。
お能を見たことは何度かあったが、こんなに近くで見るのは初めて。しかも能楽堂という空間ではなく、それ用になにかしつらえのある空間でもないこの狭い上映会場で(^^;)
観世流能楽師の中所宜夫さんがつけた面がまた絶世の美女で、息を飲むほど美しい。一体なんて顔!?しかも顔だけじゃなくて、表情が変わるようにしか見えず、見入ってしまう。
このお面も、新井君の作製だそうで......22歳でこんなお面を作るのかぁ......末恐ろしや(^^;)
最後に舞台挨拶で、ご本人新井達也君が登場。舞台にあがらずもじもじしている居心地の悪そうな様子に、いかにも!な気がしておかしい(^^)。能面同様、濁りのないひとなのだろうと思った。
もしかしたら。
若さ故にこんな完璧な(と私には見える)能面が作れるのかしら??
もしも年を取ったら、悩みや迷いを抱えた、もっと渋い味わいのある人間臭い面が生まれて来るのかしら??
それはそれで楽しみ!
今度能を見るときは、大分見方が変わりそうな予感がします(^^)
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この記事へのコメント
1. Posted by H 2006年04月04日 04:34
いや〜「お面」については興味はあったが全然知識がなかった私。すっごく興味深く読ませてもらったよーー
この映画観たいっ!!
どうにかして手に入らないかしら??
まさかDVDなんかになってないよね?
調べてみます。
この映画観たいっ!!
どうにかして手に入らないかしら??
まさかDVDなんかになってないよね?
調べてみます。
2. Posted by ごんごん 2006年04月06日 00:34
素敵な情報有難うございますm(__)m
うわー凄い見たくなりました。。。
このアップリンクファクトリーの
いろんな映画、超面白そうですね〜!
(^O^)
うわー凄い見たくなりました。。。
このアップリンクファクトリーの
いろんな映画、超面白そうですね〜!
(^O^)
3. Posted by ハシモト ユウコ 2006年04月06日 22:00
アップリンク・ファクトリーに、DVD化のリクエストメールを出すのはどう?(^^)
アップリンクで上映してDVD化されてる作品も多いよ。アップリンクのホームページの、「Webshop」を見てみて!
4. Posted by ハシモト ユウコ 2006年04月06日 22:03
お久しぶりです!!
遊びに来て下さってありがとう〜
そうなの、ここはとっても面白いイベント盛りだくさんの場所よんv 是非行ってみて!!





